父は会社に殺されたと思う

父は過労死だったと認めさせるため…美人姉妹(笑)の奮闘記

日本の底辺で生きる子供

友達のネグレクトを児童相談所に相談したら、裏切ったことになるのか - 父は会社に殺されたと思う

ネグレクトは私のせいじゃない - 父は会社に殺されたと思う

の追記です。

 

 

やっぱり見て見ぬふりはできないと思った。countryちゃんの子供のため、じゃない。私のためだと思う、もし何かあったときに責任を感じたくないからかもしれないし、いい歳して男に人生振り回されてるcountryちゃんに偉そうに説教したかったのかもしれないし、そうやって優越感に浸りたかったからかもしれない。

 

土曜日

車で2時間かけて地元に帰った。何度も連絡しても繋がらないからcountryちゃんが子供と2人で暮らすアパートに向かう。人の気配はするのにインターフォンを何度押しても返事がない「countryちゃん」とノックをすると「だれ?」と子供の声が聞こえる。countryちゃんの息子の大助くんだ。「大助君、ラブラドールのおばちゃんだよ。ヒヨちゃん(私の娘)も居るよ。」と言うと大助君はドアを開けてくれた。

 

大助君は一人でお留守番をしていた。「朝ごはんは食べたの?」と聞くと、「食べるものがなくなっちゃったから…。」と気まずそうに下を向いた。キッチンは洗っていない食器とビールの空き缶で占領されていた。食べ残しが腐ったような酸っぱいにおいがした。キッチンに目を向けながら「大助君が自分でご飯を作ったの?」と聞くと、首を振る。「火曜日にママとママのお友達と鍋をしたの、鍋パーティーのあとママは飲みに行って、それからお仕事が忙しくて帰ってこれないからお留守番してたの。火は使っちゃいけないって言われてるから、鍋のあまりをチンして食べた。」と大助君が言う。countryちゃんは3日間帰ってきていないようだった。

 

「おばちゃん、コンビニで何か買ってくるから、大助君はお風呂に入って待っていてね、今おばちゃんお風呂沸かしてあげるから」って言った。酸っぱいにおいなのはキッチンだけじゃなく、大助君からも何日もお風呂に入っていないようなにおいがしたからだ。脱衣所は洗濯物が山積みでヘドロのような匂いがした、お風呂に入ると物凄いヘドロのにおいがする、バスタブにいつから入れっぱなしなのか想像もできないような緑色の水が入っている。換気用に開けていた窓の隙間から落ち葉が入り込んで、緑の水に浮いて腐っている。

 

「大助君、お風呂壊れてるみたいだから、おばちゃんの実家に行こうか」と言うと、大助君は黙ってうなずいた。《大助君がお腹を空かせてるから、私の実家でご飯を食べさせてきます。心配しないで。戻ったら連絡ちょうだいね》とメモを書いてcountryちゃんの部屋をでた。

 

実家で大助君をお風呂に入れて、朝ごはんを食べさせた。急だったからお味噌汁とご飯と厚焼き玉子と明太子しかなかったのに、大助君は夢中で食べていた。娘と3人で近所をお散歩したり、ディズニーのDVDを見たりした。おやつの時間には3人でプリンを作った。昼過ぎになると緊張気味だった大助君もすっかりリラックスして実家でくつろいでくれた。16時になっても、まだcountryちゃんからの連絡はない。「countryちゃんが心配してるかもしれないから、おばちゃんアパートを見てくるね。」と言うと大助君は自分も行くって言った。

 

countryちゃんは、まだ戻ってきていなかった。大助君が寂しそうに下を向く。なんだかかわいそうになって、「おばちゃんとケーキでも食べて帰ろうか」って大助君を誘った。《大助君が心配しているので連絡ください》ともう一枚メモを残して部屋を出た。CAFEで大助君とケーキを食べながらいろんな話を聞く。countryちゃんがあまり家に居ないから、学校の持ち物が準備できなくて忘れ物が多いし、文房具も足りなかったりして先生から怒られることが嫌だった。お風呂にあまり入れないし、着替えも足りなかったりすることが多いから「臭い」「貧乏」って友達から言われるのが嫌だった。だからあんまり小学校にも行かなくなっているみたいだった。

 

・countryちゃんが学校に連絡して「イジメにあってるから、学校に行けない。担任が息子につらく当たるから学校に行けない。」って言ってあるから、行きたくないときは行かなくても特に問題はない。ママは僕を守ってくれた。

・ママは僕を育てるために一生懸命働いている、お仕事が忙しいのは僕のため。ママは忙しいからおうちの事はあまりできないけど、手伝いができない僕が悪い。ママは一生懸命頑張っている。

・ママはいつも疲れていてかわいそう。

 

大助君は、一生懸命countryちゃんの事をかばっていた。そういう言葉を聞くたびにものすごい悲しい気持ちになった。

 

その晩もcountryちゃんから連絡は来なかったし、携帯も繋がらなかった。アパートに一人で大助君を戻すわけにもいかなかったから実家に泊まってもらった。私の母がcountryちゃんの実家に電話をして事情を話した。小さな学区だから、母とcountryちゃんのお母さんも知り合いだったからだ。countryちゃんのお母さんは「countryとはもう縁を切った、散々迷惑をかけられてきたからもうかかわりたくない。成人した娘の尻拭いをする義務はない。そうやって尻拭いをしている限り、あてにされて利用されるだけ、もうどうしようもない。大助ももう小学5年生になるんだからcountryに任せておけば大丈夫。」って言った。

 

日曜日

お昼過ぎにcountryちゃんから、アパートに戻ったと連絡が来たから、大助君を連れて行った。アパートの駐車場には全く高級感が感じられないベンツが停められている。インターフォンを押すと、Tシャツにハーフパンツで髪に寝癖を着けたガラの悪い男が出てきた。その男の顔を見ると、大助君が私の服の裾をぎゅって握った。部屋の奥から服を着ながらcountryちゃんが出てくる。「入って」ってcountryちゃんがダルそうに言った。「大助、おやつでも買って外で遊んでなさい」ってcountryちゃんが大助君に1000円渡した。男は何も言わず、物凄いお酒の匂いをさせながら荷物をもって帰って行った。

 

countryちゃんが、タバコに火をつける。ちがう、タバコじゃないってすぐに気が付いた。薬とか葉っぱとか合法ドラックとかハーブとか、TVや映画で聞いたことがあるけど、実物を知らない私にはcountryちゃんが火をつけたものが何なのかはわからなかったけど、私もタバコは吸うから、タバコじゃないことだけはわかった。「コーヒーいれるよ」とcountryちゃんがキッチンに行って、使ったままの土鍋をどかしてカセットコンロに火をつけた。「ガス停まったんだよね、まぁ、こっちから停めてやろうと思ってたからいいけどね。ガス代踏み倒してやるしねww」ってcountryちゃんが笑う。

 

「countryちゃん、このままでいいの?」って私が言うと、countryちゃんは黙って私を睨んだ。そして笑った。「あんた、底辺見学にでも来たの。大助の面倒を少し見て、いいことしたって優越感感じてんの?出世するとおせっかいになるもんだね。」って空き缶を投げつけた。そして泣き出した。「大助を産んで、人生が狂った。もっと幸せに生きてるはずだった、昔は男にもモテたのに、大助のせいで結婚できなかった。子供を産んだせいで全部めちゃくちゃになった。」「あんたにはわかんない。あんたにはわかんない。」って泣き崩れた。

 

高校を中退したとき、私は運が良かった。親身に更生させてようとしてくれた大人がいた。自分の力で立ち直らせようとしてくれた大人がいた。だから、人よりも2年遅れたけど大学に行けた。countryちゃんには尻拭いをしてくれる大人と、利用する大人の2種類しかいなかったんだって思った。「countryちゃん、大助君手放したいの?」って聞くとcountryちゃんは首をふった。「普通の親子みたいになりたいけどなれない。どこから手を付けていいかわからない。でもほんとは普通の幸せがほしい」って泣いた。

 

「とりあえず、ガス代払ってガスを使えるようにしよう」って言った。ガスがなきゃ大助君にご飯を作ってあげることもできないし、お風呂に入ることもできない、大助君お腹を空かせてたし、においでイジメられるから学校に行きたくないって言ってたことを話した。countryちゃんは黙ってうなずいた。でも「お金がないから、来月までは無理」って言った。だから滞納したガス代と、当分の大助君の食事代として5万円を貸した。もう少しまともな生活をするきっかけになるなら、5万円くらい帰ってこなくてもいいと思った。

 

countryちゃんは、「ごめんね、ごめんね」って何度も言った。それから、countryちゃんと一緒にゴミを捨てた、食器を洗った、countryちゃんが洗濯機を回しながら「あとは自分でできる」って言ったから、ほっとして実家に戻った。

 

18時、実家のインターフォンがなった。「ママがラブラドールさんのお家で留守番してなさいって言ったの」って大助君が訪ねてきた。ママは何処に行ったの?って聞くと「さっきの男の人とご飯を食べに行った。今日、ラブラドールさんとアパートに帰ったことで男の人が怒ったらしくて、ママが謝るためにご飯をおごってあげなきゃいけない」って大助君は答えた。さっきの男の人はcountryちゃんに最近できたカレシで、カレシが来ると大助君は夜でも1000円を渡されて外で遊んできなさいって言われてること。カレシがcountryちゃんに暴力をふるったり怒鳴ったりすることが怖いこと、大助君は話してくれた。

 

countryちゃんに電話をした。出ない。何度も電話したけど出ない。23時過ぎにやっと電話がつながった。電話の向こう側からカラオケの音が聞こえる、countryちゃんはベロベロに酔っ払っていた。「私が貸したお金で、大助君ほったらかして遊んでるの?」って聞いたら「ラブラドール人が良すぎなんだよwww騙されないように気を付けなぁww大助のこと心配なんでしょwwよろしくねww」って笑って言った。

 

 

月曜日(今日)

あれから、大助君は実家に泊まった。countryちゃんとは連絡がつかない。今日は実家にいたけど、明日は家に戻らなきゃいけない。これから児童相談所に事情を話にいくつもり。

 

私のしたことって余計なおせっかいだったかもしれない。って今更思えてきた。大助君はママが大好き。離れて住みたいなんて思っていない。私も児童相談所に相談したほうがいいのかずっと迷っていたけど、もう相談をせざるを得ない状況になってしまった。っていうより、私がそういう状態を作り出してしまったのかもしれない。

 

これから、相談に行ってきます。どうなるんだろう。